荒井良二展

Arai ここしばらく気持ちがざわざわと落ち着かず、
ちょっと困っていましたが、
荒井良二の絵を見るとそんな気分も
吹き飛んでしまいました。
やっぱり絵はいいですね~~。

荒井良二はイラストレーターで絵本作家。
まるで子供の落書きみたいな自由奔放な画風。

今年の春にスウェーデンの児童文学賞
「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を
日本人では初めて受賞。
この賞は『長くつ下のピッピ』で有名な
児童文学作家リンドグレーンを記念してスウェーデン政府が設立したもの。
子供の本のノーベル賞とも言われる世界最大の児童青年文学賞なのだとか。
審査員からは「斬新、大胆、気まぐれ、全く独自の発光力を持つ絵本画家」と
評されたそうです。

今回私が行ったのは、練馬区のちひろ美術館で開催されている
リンドグレーン賞受賞記念企画展「荒井良二のはじまりはじまり」。
絵本の原画と立体作品、それからリンドグレーン賞の賞状(デザインされた文字に
絵入りで、さすがに芸術的)もありました。
ひと部屋だけの展示でしたが、閲覧自由になっている絵本を読みふけっていると
かなり時間が経ってしまいました。

原画は、絵本になっている絵とはまた異なる印象を受けました。
一枚の絵として見ると、なんだか違った風に見えるのが不思議。
原画ならではの細やかな筆致や繊細な色彩にはもう、感動しまくりでした。
イラストや絵本が好きな人なら、見ておくべきかもしれません。

Happy せっかくなのでここで絵本のご紹介。
荒井良二の絵を初めて「いい!」と思ったのが
この『はっぴぃさん』。
表紙だけでは中身の良さが全然伝わらないのが
残念ですが。

「はっぴぃさん」とは、
山の上の大きな石の上に時々やって来て
困った事や願い事を聞いてくれるという謎の存在。
そのはっぴぃさんに会いに行く少年と少女のお話です。
単純化され、カラフルに力強く描かれた山の自然が美しい!

よく見ると、山の麓に広がる街には連なった戦車や崩れた建物などが
何気なく描き込まれていて、「おや?」と驚かされます。
お話の中にはそうした記述は一切出てきません。
文章では語られないものが絵だけで表現されているのです。
そして何度も読むうちに、語句も絵もいろいろと深読みしてみたくなります。

企画展「荒井良二のはじまりはじまり」は1月31日まで。
12月18日には鏡リュウジとの対談とお二人のサイン会もあります。
(事前に申し込みが必要です。)

Hajimete ←ちなみにこれは鏡リュウジ著『はじめてのタロット』。
付属のタロットカードの絵を荒井良二が描いています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

大(Oh!)水木しげる展

11月19日から川崎市市民ミュージアムで開催されている
「大(Oh!)水木しげる展」に行ってきました。

水木しげるのマンガや妖怪中心の展覧会だと思っていたらちょっと違っていて、
水木しげるの人生そのものにスポットを当てた内容でした。

入り口では等身大(たぶん)の水木しげる人形がいきなりお出迎え。
中に入ると、氏の自伝マンガと共に、小学校の通知表や十代の頃の手作り絵本、
戦地で描かれた絵、結婚式の写真などがずらーっと展示されています。

若い頃のデッサン画や水彩画は美しい色彩でとても素直に描かれていて、
現在の絵柄とはまったく違う魅力がありました。
絵を見ていると、ただ描きたい一心で描いていた感じがひしひしと伝わってきます。

氏が戦地で片腕を失くされた話は有名ですが、
当地でのスケッチは私は個人的には一番好きでした。
現地の子供や老人、風景などが描かれていて、
南方の生活感や空気が感じられる絵。
なぜだかその絵には、戦争の悲惨さや暗さはあまりありませんでした。

もちろん、復員後本格的に絵で生活するようになってからの作品は
相当数展示されてます。
貸本マンガや紙芝居から、鬼太郎シリーズなどのヒット作まで、かなり膨大な数。
このへんはもう説明不要という感じ。

あと面白かったのは、水木しげるが世界各地で収集した仮面のコレクション。
クモやサソリ、正体不明の精霊たちの仮面が壁一面に飾られていて、
迫力ありました!
あんな呪術めいたものを部屋に飾ったりしたら、
影響受けすぎて自分の生活を乗っ取られてしまいそうです;

ところで川崎市の市民ミュージアムには初めて行ったのですが、
なんだか微妙に変わった造りの建物…という印象。
企画展も他所ではあまりやらないようなものをやっているし、
ちょっと気になる美術館ですね。

この「大(Oh!)水木しげる展」は来年の1月9日まで。
途中、「ゲゲゲの鬼太郎」「カッパの三平」「悪魔くん」の映画上映や
京極夏彦氏の講演会などもあるようです。
http://home.catv.ne.jp/hh/kcm/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

於岩稲荷田宮神社

Oiwa
お岩稲荷ってどんな所だろう…と
ドキドキ(ビクビク)しながら行ってみました。
周囲はちょっといい住宅街といった感じで、
その中にいきなりお岩稲荷が。
家々に囲まれて、こじんまりとしてました。

お岩稲荷でもらった資料によると、
「四谷怪談」は当時江戸で話題になった
数々の事件をヒントに創作されたもので、
実際のお岩さんとは無関係。
お岩さんは、夫の田宮伊右衛門とは仲の良い夫婦だったそうです。

なぜお岩さんが有名になったかというと、
お岩さんが信仰していた屋敷社が霊験あらたかで、
そのおかげで田宮家が再興したと評判になったため。
お岩さんの没後、その屋敷社は「お岩稲荷」と呼ばれるようになり、
お岩さんは祭神「於岩さま」となって多くの崇敬者を集めたとのこと。
いつまでも衰えない人気ぶりゆえに、とうとう「四谷怪談」の主人公として
その名前を使われることになってしまった…のだそうです。

よく「縁切りに効く」とか「四谷怪談を上演する時にはお参りしないと崇りがある」とか
聞きますが、それ以外の普通の祈願でも別にOKなんですね。

この資料の文章からは、お岩さんと崇りを切り離したい意図が
なんとな~く感じられるのですが^^;
お岩さんが意識的だったか無意識的だったかは分からないけれど、
ともかく庭のお社のご利益に気付き、それを実際に使ったという時点で、
後世にお岩さんが化け物じみた存在にされてしまうことは必然だったかもしれません。

こっちの世界と異世界の橋渡し役を担うのは、狐とか崇り神などのバケモノ。
韓国なんかではご先祖がその役目を負うらしいですが、
日本では昔からそれはあまりなかったようです。
お岩さんとお社の間にもそうした仲介者がいて、結び目があったのだと思いますが、
お岩さんの死後200年近く経って「四谷怪談」が書かれたことで、
お岩さん自身がその結び目にされてしまったわけです。
「良妻・於岩さま」よりも「崇り神・於岩さま」の方が
結び目として強力であることは間違いないでしょうし。

動物は100年生きたら妖怪になると言いますが…
お岩さんは死後200年経っても人々に忘れられなかったので、
崇り神になったんでしょうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ギュスターヴ・モロー展

Moreau 渋谷のbunkamuraザ・ミュージアムで開催中の
ギュスターヴ・モロー展に行ってきました。

ギリシャ神話や聖書の物語をテーマにした、
神秘的で幻想的なモローの世界は、
思わずため息が出てしまうような美しさでした。

今までモローのことはよく知らなかったんですが、
どうしてこんなに良いものを知らなかったんだろうと
思ってしまいました。

今回の目玉は、パンフレットに載っている「一角獣」と、
サロメとヨハネを描いた「出現」。
特に「一角獣」はダントツで良かったです。

Moreautheapparition

モローの若い頃の作品は、美しいながらも
どこか鬱屈した感じがあるのですが、
晩年の作品になるにつれて
内にこもった雰囲気がなくなり、
だんだんと澄みきった空気感を
感じさせる絵になっていくのが印象的でした。

一角獣もそうですが、
ゼウスなんかもまるでガラス玉のような目をしていて、
「いっちゃってる」表情。
本来見てはいけないもの、という感じです。


私が「神性」というものに対して持っているイメージと同じで、
「そうそう、この世ならぬものって、きっとこんな目をしてるんだよね…」と
一人で納得してました;

今回のモロー展は9月12日を境に前期と後期に分かれていて、
途中で展示画の入れ替えをするのだそうです。
最終日は10月23日なので、気が向いたらまた後期も見に行こうかな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

幽霊画

Zensyo 台東区谷中の全生庵というところで
幽霊画の展示をしていると聞き、
早速行ってきました。
幽霊画は、落語家の三遊亭円朝(1839-1900)が
コレクションしていたもの。
全生庵には円朝の墓があり、
円朝忌の行われる8月に
毎年幽霊画を公開しているのだそうです。

千代田線の千駄木駅から行ったのですが、
全生庵までの道沿いには
「円朝まつり」の旗が並んでいました。
拝観料300円を払って展示室に入ると、
部屋いっぱいにずらっと幽霊画が!
数は数えなかったんですが、多分30~40点くらい。

Yurei 私が気に入ったのは、兵藤林静作の
雨の中にたたずむ幽霊「雨中幽霊図」。
川を渡る幽霊「瞽女の幽霊」や、
白いシルエットだけの幽霊と
赤い南天の実が描かれた
「雪女図」も良かったです。

幽霊にはなんだか水が似合いますね。
普通は人魂の火を合わせるのかもしれませんが。

ちなみにここに載せているのは
丸山応挙の「幽霊図」です。

あと気になったのは、
後生車らしきものに寄り添う幽霊「母子幽霊図」。
後生車は菩提車、念仏車などとも呼ばれる、車輪のついた墓標です。
子供など、特別な死者を供養するためのものらしいのですが、
車輪を回すことが経文を読んだのと同じ意味を持つため、
回してあげると供養になるのだそうです。

石柱のものや、木の卒塔婆に車輪がついたものなど、いろいろあるようですが、
この絵に描かれているのは角材のような木柱。
車輪の上の方には窓のようなものがあり、
開いた窓から光が差して、赤ん坊を抱いた幽霊の顔を照らしています。

ネットで調べると後生車の写真はたくさんありますが、
窓付きはありませんでした。
けっこう珍しい図柄なのではないかと思います。

円朝コレクションの他に、
他の落語家(名前を忘れてしまった)から
寄贈された幽霊画も展示されてましたが、
そちらは絵柄がバラエティに富んでいて面白かったです。
まるで天使のような白い羽の生えた幽霊や、
死体桶から顔をのぞかせる幽霊、
手に櫛を持った幽霊、大ガマと美女(ガマの妖怪?)などなど…。

幽霊画の展示は8月31日まで。
円朝コレクションは全生庵のホームページでも見ることが出来ます。
http://www.theway.jp/zen/

| | コメント (0) | トラックバック (0)